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執筆者の写真熊澤剛

人的資本経営とは何か?(その10)



人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。


今回は、「時間や場所にとらわれない働き方を進めるための取り組み」について解説したいと思います。


時間や場所にとらわれない働き方は、従業員のモチベーション向上や生産性向上に繋がると期待されています。この働き方を推進するためには、以下のような取り組みが考えられます。


1. 柔軟な働き方制度の導入

・テレワーク制度:

いつ、どこで、どの程度テレワークを行うのかといった制度を設計し、IT環境の整備を行います。また、テレワーク中のパフォーマンス評価や、問題発生時の対応策を定めておきます。

・フレックスタイム制度:

従業員が自由に勤務時間を調整できるようにしたり、コアタイムの設定により、一定の時間帯は全員が勤務する時間帯を設けたりします。

・リモートワーク制度:

オフィス以外での勤務を認めると共に、更には従業員のライフスタイルに合わせた働き方を可能にします。


2. 業務プロセスの見直し

・デジタル化:

書類の電子化やクラウドサービスの導入により、どこからでもアクセスできる環境と、データの共有や共同作業の円滑化、更には自動化ツール導入による 繰り返し作業の効率化を図ります。

・業務の標準化:

新人やリモートワークの従業員でも業務を理解できるようマニュアル化を進めます。


3. コミュニケーションの強化

・オンラインツールの活用:

チャットツール、ビデオ会議システム: リアルタイムなコミュニケーションを可能にします。

また、プロジェクト管理ツール等により、タスクの進捗状況を共有し、チーム全体の連携を強化します。

・定期的なオンラインミーティング:

顔を合わせてコミュニケーションをとる機会を設けことにより、従業員の意見を聞き、モチベーションを維持する仕組みを整えます。

・非同期コミュニケーションの促進:

メール、掲示板: 時間差でコミュニケーションを取り、従業員が自分のペースで業務を進められるように工夫します。


4. 従業員の意識改革

・働き方改革に関する研修を行い、柔軟な働き方のメリットや、そのためのルールを周知し、

自己管理能力の向上を支援します。

・目標管理制度の導入により、従業員が主体的に目標を設定し、達成に向けて取り組むことができるようにします。

・従業員一人ひとりのキャリアプランを支援し、長期的なモチベーション向上につなげるよう工夫します。


これらの取り組みを進める上で重要なことは、全社一律の対応を進めるのではなく、従業員の意見を聞きながら、企業の状況や業種に合わせた柔軟な対応を行うことです。

「時間や場所にとらわれない働き方」は、全ての企業にマッチした万能な取り組みではないからです。


一つは、全ての業務がリモートワークに適しているわけではないということがあります。

業務内容によっては、対面でのコミュニケーションが不可欠な場合もあるのです。

また、オンラインコミュニケーションだけでは、人間関係の構築が難しい場合があり、従業員の孤立化が起こるリスクも内包しています。

さらには、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクを常に意識し、対策を講じる必要もあります。


時間や場所にとらわれない働き方は、企業にとっても従業員にとってもメリットが大きい一方で、様々な課題も存在します。これらの課題を克服し、より良い働き方を実現するためには、企業と従業員が協力して取り組むことが重要です。


今回の記事で、人材版伊藤レポートの人的資本経営を具体化するために実行に移すべき取り組みや、その実践ポイントや有効な工夫点などを示した8つの項目の説明は終了です。

数多くの多角的な取り組みが求められる一方で、一つ一つの取り組みは、至って平易なものではなかったでしょうか?


一方で、人的資本経営が企業に組み込まれ、機能するまでにはそれなりの時間を要することもおわかりいただけたものと思います。

速やかに出来るところから取り組むことが、企業の中長期の成長を左右することを肝に銘じて、先ずは取り組んでみませんか?

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