人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。
今回は、経営戦略と人材戦略を密接に連動させる重要性を提唱した人材版伊藤レポートにある8つの取り組みの内、「AsIs-ToBeギャップ」の定量把握のための取り組み(以下「定量把握のための取り組み」と表記)について解説したいと思います。
AsIs(アズイズ)とは現在の状態、ToBe(トゥービー)は理想の状態を指します。
ギャップとはすなわち現在と理想の状態の差分を示しており、このギャップの解消が課題解決なのです。
定量把握のための取り組みとは、このギャップを見える化(定量化)することを指しています。
定量化する理由は、ToBeを明確にすることと、課題解決の状況を定期的にモニタリングする為です。
では、具体的に何をしたらよいのか?
人材版伊藤レポートでは、以下の5つの取り組みを示しています。
1)定量把握する項目の一覧化
2)人事情報基盤の整備
3)動的な人材ポートフォリオ計画を踏まえた目標や達成までの期間の設定
4)人事システムの活用
5)外部データの活用
留意すべきは、全ての企業が、これらの取り組みを記載の順番通りに実施するという話ではないということです。
既に4)が整備されている企業であれば、1)2)はだいたい終わっていて、不足している情報があれば人事システムに付加することで、定量把握が可能となります。
人事システムが未整備の企業においては、1)からスタートし、今ある情報の集約と、不足している情報の収集を進めることとなります。
なお、以下に収集・分析される人材情報についての具体例を示します。
・基本データ:年齢、性別、職種
・スキル/経験データ:スキル、経験、資格など
・パフォーマンスデータ:売上、利益、顧客満足度など
・エンゲージメントデータ:離職率、欠勤率、満足度調査結果など
・コストデータ:給与など
5つの取り組みの中で、少々難しいのが3)でしょうか。少々文言も長いので。
企業としての事業戦略においては、いつまでにどうやって何を成し遂げるのかを決定することは普通のことです。
動的な人材ポートフォリオ計画とは、上記の活動に対して、「誰が」を詳細化し計画することを指しています。
こちらも以下の手順を踏むことが示されています。
1)将来の事業戦略を策定する
2)事業戦略に基づいて、必要な人材のスキルや数量を特定する
3)現状の人材状況と必要な人材状況のギャップを分析する
4)ギャップを埋めるための具体的な取り組みを計画する
また、5)については、自社の人材状況をより客観的に評価する為に求められています。
具体的には、以下のデータが利用できます。
・労働市場動向データ
・業界平均給与データ
・人材育成プログラムの効果測定データ
これらの取り組みを実施することで、企業は「AsIs-ToBeギャップ」を定量的に把握し、人材戦略をより効果的に実行することができます。
次回は、「企業文化への定着のための取り組み」について解説したいと思います。
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