人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。
今回は、「動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用」について解説したいと思います。
ポートフォリオの語源は、紙ばさみや書類入れという意味だそうです。
今となっては、ネット検索すると、資産運用の為の金融商品の組み合わせと出てきます。
かつて書面の株券などを書類入れに保管していたことを考えると、納得ですね。
人材ポートフォリオという言い方は何を指しているのでしょう?
これは、資産運用を経営戦略に置き換えて考えればわかります。
経営戦略に基づいて配置された人的資本の構成内容のことです。
さらには、「動的な」という形容詞が付いています。
これを踏まえると、前半の動的な人材ポートフォリオとは、企業の経営戦略の変化に対応するために、人材の配置や育成を柔軟に行うための計画と定義することが出来そうです。
これらの策定はどのように進めればいいのでしょう?
大きく3つのポイントがあります。
1)経営戦略との連携
まずは、企業の将来のビジョンや目標を明確にし、それに必要な人材像を定義します。
人材像の定義には、目標に応じた人材タイプの分類軸を用いることが重要です。
具体的には、戦略への貢献性や、文化との適合性、客観性、将来への適用性などの観点から、企業にとって最も重要な2つの軸を選定して行きます。
詳細な手順については、ネット検索すると大量に出てきますので、ここでは概要に留めたいと思います。
2)現状分析
現在の従業員のスキルや経験、将来のキャリアパスなどを分析し、不足している人材や過剰な人材を把握します。
その際、職能・得意不得意・性格・部署の適性などの定性的な指標については、人によって評価が大きく変わる項目のため、客観的かつ数値的に判断するためにも、適性検査やアンケート、スキルアセスメントなどの手法を組み合わせて進めることが一般的です。
3)ギャップ分析
将来必要な人材と現在の状況とのギャップを分析し、どのような人材をどのように育成・採用していくべきか具体的な計画を立てます。
ギャップ分析で立案した計画を実行することが運用となります。
こちらのポイントは大きく4点です。
1)定期的な見直し
経営環境や事業の変化に合わせて、計画を定期的に見直し、必要に応じて修正します。
具体的な手法としては、360度フィードバックや定期的なレビュー(1on1)などを用います。
2)人材育成に注力
従業員のスキルアップを支援し、将来のニーズに対応できる人材を育成します。
3)組織を超えた柔軟な配置
従業員のスキルや経験、希望などを考慮しながら、適材適所に配置します。
4)外部人材の活用
目標達成に対して、内部での移動や育成が難しい場合など、必要に応じて外部から人材を調達します。
動的な人材ポートフォリオ計画の策定と運用は、企業の持続的な成長と競争力強化と、従業員の成長機会提供によるモチベーションの維持向上という大きなメリットがあります。
こうした活動を長期的に運用することで、企業の成長戦略や従業員個々のニーズに適した対応策を展開することができるようになるのです。
次回は、「知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取り組み」について解説したいと思います。
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