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執筆者の写真熊澤剛

人的資本経営とは何か?(その7)


人的資本経営とは、人材を企業の成長の源泉となる資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方です。


今回は、「知・経験のダイバーシティ&インクルージョンのための取り組み」について解説したいと思います。

今回も横文字が多いですね。横文字は今どき死語でしょうか?


ダイバーシティは、ラテン語の「di:バラバラに+verse:向きを変える(英語のturnと同意)」が語源だそうです。

形や性質がさまざまであることを意味していて、日本語では「多様性」と訳されています。


インクルージョンはエクスクルージョンの対義語として使われ出した、比較的新しい概念です。

エクスクロージョンは、1947年代、社会学者のルネ・ルノワールが、失業者、障害者、外国人などが社会から排除されていることを指摘するにあたり使用した言葉です。

この後フランスでは、世界初となる「反排除法(社会的排除対策法)」が成立しています。

エクスクロージョンは「排除、隔離」、インクルージョンは「包括、含有、一体性」などと訳されます。


では、ダイバーシティ&インクルージョンとは何を指しているのでしょう?

日本では、2000年以降にダイバーシティが先行して取り組まれるようになりました。

労働人口の減少および構成の変化により、労働力の確保が企業の課題となった為、これを解決するために、それまで労働力の中心と捉えていなかった女性やシニア層、障がい者、外国人などの雇用に着目する企業が増えていったのです。

一方で、日本型雇用システムでは、均質的な組織をつくり、それをマネジメントすることが合理的とされてきた背景がありました。

均質性に慣れている従業員にとって、多様性を認めて受け入れることは容易ではありません。


そこで、ダイバーシティを補完し、発展させるという意味において、インクルージョンの必要性が考えられるようになりました。

ダイバーシティによって多様な人材を受け入れ、インクルージョンによって一人ひとりが事業に積極的に参加する機会を創出し、個々の能力を最大限に発揮できる体制が整うというものです。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、「多様性を認めることと活用すること」と理解して良さそうですね。


知・経験のダイバーシティ&インクルージョンには、前述の労働力の確保の他にも多くのメリットがあります。


1)イノベーションの促進

多様な視点から問題解決や新しいアイデアが生まれやすくなります。

2)意思決定の質の向上

多様な意見を取り入れることで、より客観的で質の高い意思決定が可能になります。

3)従業員のエンゲージメント向上

自分の意見が尊重され、組織に貢献していると感じられることで、従業員のモチベーションが向上します。

4)組織全体の成長

多様な人材が活躍することで、組織全体の能力が向上し、持続的な成長に繋がります。


具体的な取り組み例には以下のようなものがあります。


1)多様なバックグラウンドを持つ人材の採用

学歴、職歴、国籍、性別、年齢など、多様なバックグラウンドを持つ人材を採用し、組織の多様性を高める。

2)メンター制度の導入

経験豊富な社員が、若手社員や異業種からの転職者に対して、知識や経験を伝授する。

3)異業種交流会の実施

異業種の人々と交流することで、新たな視点やアイデアを得る機会を提供する。

4)社内での知識共有の促進

社員同士が知識や経験を共有できるような仕組みを構築する(例えば、社内SNS、ナレッジデータベースなど)。

5)多様な働き方の推進

テレワーク、フレックスタイム制など、多様な働き方を認めることで、より多くの人材が活躍できる環境を整える。

6)無意識のバイアスに対する研修の実施

無意識のバイアスが意思決定に与える影響について理解を深め、公平な評価を行うための研修を実施する。


成功させるための主な5つのポイントです。


1)経営層のコミットメント

トップから積極的に推進していくことが重要です。

2)具体的な目標設定

目標を数値化し、進捗状況を定期的に評価することで、取り組みの効果を測定します。

3)従業員の意識改革

多様性を受け入れることの重要性について、全社員に周知徹底する必要があります。

4)制度の整備

多様な働き方やキャリアパスに対応できるような制度を整備します。

5)継続的な取り組み

ダイバーシティ&インクルージョンは一朝一夕に達成できるものではありません。継続的な取り組みが重要です。


知・経験のダイバーシティ&インクルージョンは、組織の成長にとって不可欠な要素です。

多様な視点や知見を活かすことで、イノベーションを創出し、持続可能な組織を築くことができます。


次回は、「リスキル・学び直しのための取り組み」について解説したいと思います。

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