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幸せな家庭は似ているが、不幸せな家庭にはそれぞれの不幸がある。
トルストイ「アンナ・カレーニナ」
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幸福学の第一人者である慶応義塾大学の前野教授が提言する「はたらく不幸せ」の条件を満たさない為に気を付けるべきの7つの因子について解説していきます。
4つめの因子は「不快空間」です。環境イヤイヤとサブタイトルが付いています。
概念定義は、職場環境において、視覚や嗅覚など体感的に不快を感じている状態だそうです。
なお、尺度項目として以下が例示されています。
・私の職場は、汚れていて不衛⽣だと感じる
・私の職場は、嫌なにおいがする
・私の職場は、無機質で冷たい感じがする
以前に顧客満足(CS)の第一歩は従業員満足(ES)から!と銘打って、従業員満足度調査が流行ったことがありました。
皆さんの中には過去に実施したことを覚えていらっしゃる方もいらっしゃるかも知れません。
もちろん今でも真面目にESを測定している企業もあります。
このES調査で特に女性からの意見として多く見受けられたのが、トイレに対する不満でした。
薄暗い、冷たい、数が少ない、歯みがきがしにくい・・・
自社ビルであればともかく、テナント入居のビルではトイレの改善は難しいものがあります。
そんな背景からなのか、改善できないことの不満を調査しても仕方がないとしてES調査を止めてしまった企業も多いとか。
私はこの手の相談をクライアントからいただいた時に、「トイレが綺麗になったからといってESは上がりませんよ」とアドバイスさせていただいています。
前野教授が提言されている通り、不幸せを満たさないだけでは幸福にはならないからです。
マイナスがゼロにはなるかもですが、プラスにはならないということです。
また、快・不快は人により感じ方が様々です。
例え感性が似た人でも、外回りが多く職場にいる時間が少ない人と、内勤の人では、職場で不快に感じることの「量の違い」があったりします。
一方、いくら幸せの要因が満たされていても、不幸せの要因が残ったままでは幸福にはなりません。
さて、どうしたらよいのでしょう?
私は、ES調査などをきっかけとして、職場の全員で不快の要素を明確にすることを、改善を図る第一歩の活動としてお勧めしています。
自分は気にしていなかったことが他の人には不快だったり、その逆があったりという発見を通じて、前回も取り上げた「自己受容」や「他者理解」をまず進めることで、絶対解のない「快・不快」の落としどころを探っていく。
制約の中で最適解を探す行為は、核心においては似たようなものなのです。
引用︓パーソル総合研究所・慶應義塾⼤学前野隆司研究室
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